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第8回 造形と藍染

田中 賢二

(たなか・けんじ / TANAKA・KENJI)

田中  賢二の写真

1942年東京生まれ。1963年桑沢デザイン研究所卒。1988年八ヶ岳の麓に灰汁発酵建の藍染の工房を移築。1990年東京アメリカンクラブ内ギャラリーにて作品展。1997年藍染教室『藍に遊ぶ会』主催。1998年ドイツ シーボルトミュージアムにて作品展。1999年ハンブルグ国立工芸博物館がタペストリーを収蔵。2004年ニューヨークのギャラリーにて作品展。2007年玉川高島屋にて作品展。2009年松明堂ギャラリーにて作品展。新宿高島屋にて作品展。2012年三鷹市芸術文化センターにて『蓮』展。2013年新宿高島屋にて作品展。以降、毎年個展を開催。

日本の伝統工芸の藍染で、独自のアートの世界を表現し続けるなか、2019年、インスタグラム上で紹介された田中の作品がカンヌのギャラリーに高く評価され、イタリアのSCALVINI MUSEUMで個展開催が決定。

工房藍 「田中賢二 藍の世界」HP
https://www.kenjitanaka.info/
工房藍 「田中賢二 藍の世界」FB
https://www.facebook.com/pg/kohbohai/posts/

天然灰汁発酵建の藍染とは

木炭の(アルカリ)が藍染に絶対欠かせないものです。蒅(すくも)という染料は水に溶けず灰汁(アルカリ)によって溶かす。他にお酒、石灰、麬(ふすま)が必要です。それが藍です。

縫い絞った布を藍甕に静かに沈め浸け、その布の染液を絞り空気に晒す。空気酸化によって空気が入る所だけが染まります。防染技術はいろいろありますが染めたくない部分は空気が入らない様に(糸を巻いたり板でキツく絞めたり)工夫が必要です。

しかし、天然灰汁発酵建ては今後継承していくことも難しくなってきています。

一つ目は灰の不足であります。使用する灰もただの灰ではなく「椚(くぬぎ)」などの堅い木である必要があり、木を燃やす工程のある職業も少なくなり入手も困難である。今は小豆を煮る羊羹屋さんから頂いています。

二つ目は蒅の現状。染料もそうであり高齢化の為に蓼の栽培農家さんや蒅の職人さんも少なくなりつつあるのです。

古い昔から人の営みに寄り添って来た天然の藍という染料が姿を消さないことを願うばかりです。

やわらかく、時には凛と、気品と深い味わいがあり草木染めの中でも最も色褪せが少なく年を追うごとに冴えが出てくる天然藍。これは染められた繊維の中に発酵菌が生き続けるからです。

「かめのぞき」という色があります。藍が甕の中で発酵を始めた初期のまだ若く、淡く、透明感のある青です。そして色は熟成し、時を経てやがて老いてゆく。

その朽ちた時ですら天然の藍は美しいのです。

イタリア個展開催
2019年9/19(木)~10/2(水)
Museo Giuseppe Scalvini
Via Giovanni Maria Lampugnani ,66,20832 Desio MB , ITARY.
https://museoscalvinisocia.wixsite.com/museo-scalvini

    【 この人は語る/第9回 】マグロニカン