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第13回 光と向き合う

服部 高久

(はっとり・たかひさ / HATTORI・TAKAHISA)

服部 高久の写真

SPACE CALDO Inc. 代表
東京都出身。燈師。
燈師 -あかりし-とは、光を概念とした「光を扱う者」の意であり、光を用いたアート表現と照明の機能を活かし照明デザインを表現している。
2015年に独立後、2018年にSPACE CALDO Inc.を設立。12歳からテニスを始め、選手を経てプロテニスコーチとの両立をする。燈明、アート展、舞台作品から店舗、住宅など、幅広く光空間を演出。日本のみならず、広く海外に向けても「燈明 -みあかし-」を発信していくことを目指している。

SPACE CALDO Inc.
http://spacecaldo.com

Official Facebook Page
http://facebook.com/spacecaldo

Official Instagram Page
http://instagram.com/spacecaldo_takahisahattori

光との出会い

 初めてお会いする方には、ほぼ絶対の確率で質問をされます。
 自己紹介をすると、訳が分からないという顔でこちらを見た後「えっ?」「んっ?」が次に出る言葉です。
 それはそうですよね。テニスコーチですから。

 元々洋服や家具、建築、インテリアが好きだった私は、気分転換に部屋の模様替えをしていました。
 お気に入りのソファーやテーブルとその当時目に留まった素敵なスタンドを買い揃え、レイアウトをしました。

 その頃から、ホテルやレストランなどで見かける壁や天井を照らす間接照明には漠然と「かっこいいなー」という思いみたいなものがありましたが、それは全体の雰囲気や高級感みたいなものへの憧れだったのかもしれません。とは言え高級マンションでもない、普通の賃貸マンションにはその様な照明はありませんでしたが、間接照明を何とか自宅でもと考え、素人ながらに自作でソファー裏やテレビ裏に間接照明を作り、自宅を間接照明のある空間にすることができました。

 すると不思議なことに、そこには外光が入る昼間の空間とは全く違った夜の空間が浮かび上がり、それは何とも言えない表情や雰囲気を醸し出していました。
 内容は全く変わらない同じ空間に灯りを点けただけなのに、昼間の外光が注ぎ込む優しい空間と、陰影のある優しくドラマチックな夜の空間。同時に2種類の素敵な空間を手に入れることができました。
 そしてそこは私にとってずっと居たくなり、帰るのが楽しみになる空間となった。
 今まで生きてきた中で、灯りに対する興味はほぼ無く、大した関心もありませんでしたが、あの瞬間の衝撃と感動は今でも鮮明に記憶しています。

 以前からテニスコーチをしてきた私は、レッスンの中で「感動の共有」というものを実感していました。それは老若男女、人それぞれ様々なニーズを持つお客様に対し全力で応え、その目標を一緒に達成した時に得られる多幸感です。
 「こと」や「もの」を伝える仕事をしてきた私は、この光に感じた衝撃や感動を多くの人に伝えられたら楽しいだろうなと思うようになりました。
 何故ならばきっと多くの日本人は、光のすごさに気が付いていない人が多いのではないか?
 かつての私もそうだったように。